ショップカードができるまで

ショップカードのデザイン製作から印刷までをレポートします。
 
 
 
 
 
 

 
 
 

「 活版印刷で名刺やショップカードを作りたい。」
と思う方はたくさんいらっしゃると思います。

今回活版印刷で雑誌掲載のサンプルを制作する機会がありましたので
どのような流れで進めていったかをレポートしていきたいと思います。

 
 

『デザインのひきだし vol.40』に掲載するサンプルのカードを制作しました

 
『デザインのひきだし vol.40』に掲載するお話をいただき、活版印刷でサンプルを作成することになりました。
 
活版印刷を注文したいけど、どうすればいいかわからない...とお思いの方も多いかと思います。
 
活版印刷のデータ作成方法のヒントや入稿方法なども含め制作工程をわかりやすくお伝えしたいと思います。

 

何を作ろうか?と考える。

 
活版印刷で名刺サイズのサンプルを作る。
何を作って、どんなものなら手に取った時に「わぁっ」と心が踊るのか?
 
普段業務などで名刺やカーををデザインするときは
比較的シンプルなものが好まれます。
 
今回はサンプルでもあるので、実験的な要素を取り入れたい。
 
そこで
 

  • 活版印刷のでこぼこした質感を強く感じられるもの
  • 要素が詰まったデザイン
  • 多色刷り
  • カード以外の仕様をプラスしたい

 
この4点を軸に、何を作るかをさらに絞り込んでいきました。
 

 

イメージを膨らます

 
活版印刷で『強くプレスし、多色使いした名刺サイズのカード』を作るにあたり
今までの制作物を見直したり、インターネットや書籍で情報収集したりと
たくさんのサンプルを見て自分の頭の中を整理していきます。
 
 
その際いくつか疑問が湧いてきたので上司に相談しました。
 
「活版は強くプレスする事ができるけれど、どこまで強くプレスできるか?」
 「ベタ面に白抜きのデザインの場合、白い部分をどれくらいくっきりと浮き上がる事ができるか?」
 
 
そして下記写真のサンプルを見せてもらいました。
 

- サンプル


 
サンプルを見て、白い文字が多いほどベタ面の文字部分は浮き上がるけど
デザイン的に制限があるという指摘を受けました。
 
 
それらの点を踏まえ、イメージを固めていきます。
 
活版印刷以外のものも参考にします。
 
「この雰囲気を活版印刷で再現できるかな?」
「この用紙素敵!」
 
というトキメキがすごく重要で、個人的には この作業中が一番楽しかったりします。
 
そういった作業を経て集めたアイデアを詰め込んだ資料『イメージマップ』をもとに
制作するアイテムや仕様等を上司と相談を重ねました。
 

 

コンセプトとデザインイメージの明確化

 
『イメージマップ』を作成していくと同時に、自分の中で
キーワードやコンセプトがクリアになっていきます。
 
作業を進めるにつれてデザインやコンセプトがブレそうになった時は
『イメージマップ』を見返しました。

デザイン作業 

 
活版印刷のデザイン作業は、オフセット印刷のデザイン作業とは異なります。
 
活版印刷は、デザインから樹脂版や金属版を作成して印刷します。
そのため基本的に色の濃度は100%で、透明やグラデーションといった表現はできません。
 
スタンプのような図案をイメージしていただけるとわかりやすいかと思います。
※厳密に言えば写真やグラデーションは表現できる方法もあります。別の機会に掲載していきます。
 

 
Adobe Illustratorでデザイン作業を行います。
 
今回は2〜3色使いと決めていますので
各色のスウォッチを作っておいて作業をすると楽かと思います。
 
線の太さは0.3pt以下ですと製版に支障が出る可能性が高いので
注意が必要です。
 
小さすぎる文字は印刷時に潰れてしまう可能性もあります。
 
しかし文字が潰れるリスクは文字サイズのポイント数だけでは測れず
フォントの種類やウェイトなどにも左右されると思います。
 
 簡易的な判断方法として、データをアウトライン化して
レーザープリンターで出力した際に線がかすれていたり文字が潰れて見えたりした場合は、
活版印刷でも同様の仕上がりになる可能性が高い気がします。
 
線幅や文字サイズに関して自分だけでは判断ができない場合は
事前に上司や現場で印刷をしている工場の人に
アドバイスを求めることも多々あります。
 
デザインに若干の制約ができてしまうのは苦しいところですが、
活版印刷のデータを制作する上でのポイントを
頭の片隅に置きつつ作業を進めていきます。
 
 

ポイント
・線の太さは0.3pt以上が望ましい
・小さすぎる文字は印刷時に潰れてしまうので、大きさに気をつける
・文字潰れが起きないか、レーザープリンターで出力して簡易的にチェックしてみる

  
 
 
  

入稿データ作成 

 
 

 
文字データは必ず全てアウトライン化を行い、印刷色はDICカラーのNo.を指定して入稿します。
今回は3色使いのデザインですので、データをCMKの3つに変換します。
 
 

ポイント
・印刷色はDICカラーのNo.を指定
・文字はアウトライン化
・カラーをCMYKに変換(いずれも100%)

 

用紙を選ぶ - 印圧くっきりカードの場合

 
今回使用した用紙は『特Aクッション 0.8mm』です。
紙製のコースターや活版印刷の名刺でもよく使われます。
 
当社でも人気の用紙です。
 

特Aクッション 0.8mm


他の人気用紙を確認する
 
手に取った時ににインパクトのあるしっかりとした厚みと
くっきりした印圧が際立ちます。
 
強くプレスする事、コストなどを考えて提案してもらいました。
 
 

工程の相談・色校正・印刷

 

 活版印刷の場合、印圧をかけた場合に実際のインク色と異なって見える場合があります。
 
また用紙の色が下地になるので、用紙色によってはインクが乗った際に
思っていた発色と違うケースもあります。
 

- 工場でインクを調合する

 
そのために色校正という工程があります。
 
モニター上だけで色の問題を完結するのはとても難しいと毎回痛感します。
 
毎回色校正を行うというわけではありません。
 
当社では今までの受注製品やサンプル制作の経験に基づいて
工場の職人の技術やプリンティングディレクターが蓄積したデータがあります。
 
それらは当社の強みでもありますので、安心して任せるケースも多々あります。
 

- ピンク版

 

- 次にキミドリ版

 

- 最後にネイビー版

 

 
インクの発色や印圧をプリンティングディレクターと
工場の職人の最終確認を経て印刷が開始されます。
 

- 印圧のチェック

 

- 職人が印刷します

 
当社では同じ建物内に工場があるので、印刷時に立ち会い、
色や印圧をチェックすることが可能です。
 
実際に立ち会いをされるお客さまもいらっしゃいます。
お希望の方は事前にご連絡いただければと思います。
 

 
最後は名刺を仕上げる断裁加工。オフセットに印刷比べ活版印刷の断裁は簡単でありません。
凸凹しているので、断裁のプレスを強くすれば凸凹が戻ったり、枚数を多く重ねれば、凸凹の名刺なのでズレが生じます。
 
今回のショップカードは25枚を束ねて、断裁へ。
枚数が多くなると大変な作業ですが、気を使いながら慎重に断裁します。
 

完成しました!

 

 
多色印刷で印圧くっきりのカードです。
どちらも標準的な名刺サイズとなります。
 
印圧くっきりカードは、手に取った時のインパクト大な仕上がりです。
 
今回制作したものは、付録として実際に手にとっていただくものになります。
2020年6月発売の『デザインのひきだし vol.40』、ぜひご覧ください!